Tombs - Tombs [2008] + Winterhours [2009]

Tombs

Tombs

Winterhours

Winterhours

Level Plane, Relapseから作品をリリースしているTombsを聴きました.ボストンのハードコアバンド Anodyneのフロントマンであった Mike Hillが在籍しているバンドです.
Anodyneは00年代のカオティックコアを牽引したバンドのひとつであり,"The Outer Dark"なんかを名盤に挙げる人も少なくないでしょう.最初期のIsisなんかに見られるようなスラッジコア要素も多く取り入れられていて,現在のポストメタルに通じる系譜の一端を担っていると言えるかもしれません.Anodyneの影響は,僕が最近はまっているIntronautなんかにも見ることができ,聴きながらニヤニヤできるのは非常に嬉しいことです.
そんなAnodyneでギターとヴォーカルを務めたMike Hillを含む3人で構成されたのがこのTombs.Torcheの聴きやすくて頭をフリフリできる部分を丸ごとマスコアに置き換えた感じでしょうか.的確に言葉で表現できないのがむず痒いです.ハードコア的な突進力の中に,ポストメタルに見られるようなアトモスフェリックな雰囲気を内包させる様は,同じくRelapseに身を置くスウェーデンのBurstのそれか,あるいは音の方向性で見るとNeurosisなんかと似ています.しかし系統的に考えるとなるとRelapseというよりも,Fight AmpやIntronaut,Mouth of the ArchitctなどのTranslation Loss勢に近いような気もしています.
たくさんのバンド名を羅列したような文章になってしまいましたが,これはTombsというバンドが実に多岐にわたる種類の音楽のエッセンスを持ち合わせているということを意味しています.アルバムを通して聴くだけでも,「お,このリズム感はTorcheっぽいなあ」とか「なにこのアウトロNeurosisくせー」とか「Anodyne思い出すなあ」などと様々なバンドが思い浮かぶのです.そういう意味でまさにカオティックと言えるバンドだと思います.
乱数を発生させて作った白色雑音は全ての可聴域において周波数成分を持っています.一見して煩雑に見えるザーっという音ですが,このノイズを聞かせながら「この中に○○という曲が混ざっているんだけどわかる?」と尋ねると,想像力が豊かな人は「わかる・聞こえる」と答えるそうです.周波数成分の中から,尋ねられたその曲の特徴を聞き取ることができるのでしょう.Tombsのような多様な要素が巧みに組み合わされた音楽は,聴く人によってその面白さの感じ方が顕著に異なってくると思います.それまでどんな音楽を聴いてきたかによって,ノイズの中から曲を掬い上げるようにして分解して楽しむこともできますし,もちろんそのまま混合物としても純粋に楽しめます.彼らのMyspaceページのジャンルの部分に書かれた"Experimental"の意味に,こんなことを感じてしまったわけです.

Tombs - Gossamer