2008年に聴いた素晴らしき作品たち

年を越してからだいぶ日が経ちましたが的ネタです.絞り切れずに20枚超も挙げました.

stylus FantasticusBlue Lambency DownwardBoard Up the House
sgt.を始めとする日本のインストロックに本格的にはまったのも今年からでした.2008年リリースだとtéやMiaouなんかも気に入りましたが,sgtのめくるめく展開の美しさには正直やられました.主に車の中で聴いてました.雨の車中とか最高のシチュエーション.

Kato Dotは前作までの煩雑さがうまくまとまって,純粋に曲としてスマートになった印象を受けました.一時期はこれを聴きながらの晩酌が日課だったことも.静かに酔える1枚です.

1stアルバムのインパクトが大きかったのか,Genghis Tronの2ndである今作は賛否両論な感じが見受けられました.様々な媒介を通じて打ち込み系の音が世間様で流行っていると見聞き,気になっていた僕としてはかなりツボな作風でありました.限定リリースされた信じられない人選によるリミックス盤(1,2,3しか聴いてないけど)も素晴らしかったです.個人的な中田ヤスタカ人気へのレスポンスだと考えています.
SwitchメトロクロームIII: Architects of Troubled
そして同じくテクノポップ人気をモロに受けてハマったimmi嬢の1st.PerfumeとかMEGとか中田氏がプロデュースしたものが脚光を浴びる中,ひときわロックなテイストを匂わせた楽曲で成っていて思わず感動.あのCureのカヴァーや懐かしのスケボーキングのShigeo氏参加の曲もあり.何よりその声色に惚れました.もっと評価されていい人だと思います.

声色に惚れたと言えば,eufoniusriya嬢を挙げずにはいられない.極めて透き通った彼女の声と菊地創氏の手がける曲が恐ろしくマッチ(riyaの声に合わせて曲を作っているらしい?)しているし,昔の畑亜貴に通じるプログレっぽさを感じたりしました.

2008年,悲劇の解散を強いられたカナダの不運将軍Cursedの遺作.バンドの解散を前後してこの作品に対する評価がかなり変わりました.今これを聴いて出てくるのは残念だという感想のみです.…このような充実した内容のアルバムを作るような,ポテンシャルの高い可能性に満ちたバンドが今は活動できない状態にある.悲観せざるを得ません.
Eternal KingdomQuietlyTail Swallower and Dove
スウェーデンのスラッジ/ポストメタルバンド Cult of Lunaのアルバム5枚目.バンドが精神病院の廃墟で練習していた際に発見した,とある人物の日記を元に作られたという作品.歌詞もその日記(Tales from the Eternal Kingdomと命名)から取られているらしい.マジですか?という事を思いつつ,内容はかなり良いです.曰付きコンセプトも固まっているし,音の方はこれまでのCult of Luna節を揺るがすことなく後入れエフェクトが加味されています.Isisのフォロワーかと思われた彼らの立ち位置も定まりつつあるか.

スラッジ/ポストメタル系ではMouth of the Architectも素晴らしかったです.デビュー作から順に収録曲が2曲ずつ増えているのは彼らの音楽がだんだん聞きやすくなっているのを暗示しているのでしょうか.とはいえ作品に渦巻くドス黒い雰囲気には毎度ながら魅了されます.本作にはMade Out of BabiesのヴォーカルJulie Christmasがゲストして参加.そういえばMade Out of Babiesの新作も良かったです.

These Arms Are Snakes,相変わらずこのはっちゃけっぷりには感心します.2ndのウニャウニャ感を残しつつリズム隊が頑張って,1stアルバムの持つ有機的な衝動が舞い戻ってきたかのような印象です.同じく2008年に"Stations"をリリースしたRussian Circlesと,さらにPelicanともスプリットも出してました.TAASがPelicanの"Pink Mammoth"をカバーしていたりします.ファンは要チェック.
Split (Bonus CD) [12 inch Analog]Eat the Low DogsLive the Storm
ぶっちゃけ去年一番感動したのがThursdayとEnvyのスプリット.Thursdayのヴォーカルはエモ・ヴァイオレンス系好きなんですよね,ということでこの組み合わせ.その内容もさることながらパッケージの装丁や英語・日本語にそれぞれ翻訳された歌詞,LPとCDがセットになっているなど,細かいところでの気遣いが非常に好感触.

U.S. Christmasは大穴でしょうか.以前にこの作品を1stアルバムと書いたかもしれませんが,実はそれより前にセルフタイトル盤がリリースされているのを発見しました.曲は結構かぶってますが.たぶん僕が80年代的な発想で宇宙SFモノの映画を作るとしたら,彼らの楽曲中心になります.でろんでろんですね,もうこれ.

At the Gates,まさかの再結成,そして来日ライブと.日本が揺らぎましたね.そんなAtGのヴォーカル,Tomas Lindbergが加入したDisfearというバンドのテンションは現在最高潮でないかと思います.もうカッコイイとしか言えない.頭振ってればイイみたいなノリで正解じゃないかと.このDisfearは,ConvergeのNate Newton率いるDoomridersとスプリット出してました.
Heavier Than Heaven, Lonelier Than GodSeizures in Barren PraiseSmile
20分で駆け抜けるみんな大好きBlacklistedの新作.Deathwish Incの気鋭のハードコア番長です.あまり数を聴いているとは言えないですが,去年聞いたストレートなハードコアパンクではこれが一番でした.来日ライブに行けなかったのが唯一の心残りです.

同じくDeathwishのTrap Themの2nd.ConvergeのKurt Ballouがプロデュース,Jacob Bannonがアートワーク担当.名作"Jane Doe"を思わせる頽廃的で美しい分厚いブックレットが目を引きます.この気合いの入ったサポート陣から想像できる通り,Converge並みの加速力,破壊力,カタルシスを兼ね備えた作品になっています.不整合な感じがなんとも美しい.美しいハードコアっていいね.

Borisは2008年,"Smile"ってタイトルでどれくらい売ったんでしょう.日本盤を買って聴いた時は面食らいましたが,US盤を聴いてなんか安心.日本盤も聴いてゆくうちにはまっている自分に気づく,というBoris流の魔力を感じました.ライブ盤まで"Smile"っておまえいい加減にしろよ.
Domkirke (Ogv) [Analog]Doomsdayer's HolidayMeanderthal
ノルウェーの教会でのライブを収録したSunn O)))の限定LP.EarthのSteve Mooreが弾くチャーチオルガンとAttila Csiharの呪音ヴォーカルがこ気味良いバランスを醸し出す作品です.Sunn O)))の作品ではかなり聴きやすく,録音された環境の影響もあってか,聞こえちゃいけないものまで聞こえてきそうなスピリチュアルな経験ができそうな音源です.

Grailsは2008年," Take Refuge in Clean Living "と" Doomsdayer's Holiday"の2作をリリースしましたが,あえて薄暗い雰囲気を漂わせるこちらを選びました.僕がGrailsに感じる魅力というのは多ジャンル間における橋渡しのようなものです.ジャンルという言葉は好きではないのであまり使いたくないのですが,だからこそそういった既存の概念をぶち壊してくれる音楽を欲しているのだと思います.これだけ書いといていろいろ矛盾してるのは承知していますが….

IsisのAaron Turnerによる変形ジャケが特徴的なTorcheの2nd.来日公演に行きたかったけれど多忙のため断腸の思いで諦めました.重いゆったりした曲も,体を引きずりながらすっ飛ばす曲も,全てノリノリです.楽しく音楽やってるんだなあと感じます.こういう音楽って,根底にあるBaronessやMastodonみたいなプログレ臭が意外と生きてくるものなんですね.
Jersey ShoresBees Made Honey in the Lions Skull
シアトルのスラッジハードコアトリオAkimbo.これまでも精力的なリリースが続いていましたがやはり2008年も出したようです.それまで持っていたハードコアな部分が少しそぎ落とされ,今回は多彩な変調が強調されています.頭の芯から震える重厚な音でこれをやられると良い意味で参りますね.バンドとしても新境地を切り開いた1枚なのではないでしょうか.ますますMelvinsとかぶってきそうな気もしますけど気にしない.

「うわぁ,なんだこれEarthがちゃんと曲っぽいのやってる…うわぁ….」というのは冗談で,Earth久々のアルバムは,初期の彼らの音と比べると見違えますね.かなり気持ちがいいです.感覚器がこの音を求めています.ドローン期も好きですけど,Hexを経てだいぶ柔らかくなった頭だからこそ,今のこのEarthを受け入れられるのかもしれません.


あとリイシュー,再発,企画ものとしては以下の2点を挙げときます.

3cmtourのディスコグラフィー.日本盤はCD+DVDでバンドの歴史を垣間見ることができるブックレットが付いてます.シーンの一端を担った彼らの貴重なライブ映像やオフショットも見れるのでうれしい限り.
Nadjaは去年もかなり出してましたね.スプリットや再録を含めて把握しているだけでも十数点は….そんな中で最も良いと思ったのは"Bliss Torn from Emptiness"の再録でした."Long Dark Twenties"のカヴァーもNadjaの違った一面を見れたりで面白かったんですけどね.


以上です.なげえですね.
毎年言ってるかもしれませんが,2008年はかなり良い作品が多かったと思います.もっと聞く音楽の幅を広げたいと思うのですが,だんだん僕の経済力じゃカバーしきれなくなってきたので考えものです.
あと「ですます調」は,なんだか他人に向けた文章を書いているようで少し気持ち悪かったので,2009年は控えようとおもいました!どうでもいいNE!