Rosetta - Wake/Lift [2007]

Wake/Lift (Dig)

Wake/Lift (Dig)

フィラデルフィアのポストメタルバンドRosettaによるアルバム二作目。メタル、ハードコア、ポストロック、ドローン、アンビエント・・・あらゆる類の音楽を用いて確固たるテーマを体現する。音による芸術を思わせるその独創的なスタイルから、アートメタルと呼ばれることもしばしば。
識の無い者が言えた事ではないが、「幾何学的」だとか「哲学的」だと形容したくなるような音で、IsisやNeurosisを聴いてある種の充足感を覚えてしまうような人にはうってつけである。特に"Panopticon"の頃のIsisと"A Sun That Never Sets"の頃のNeurosis。
初期の段階から彼らが執拗なまでに固執する*1そのテーマ「宇宙と人間」とは、長きに渡って人類に付きまとう、果ての無い問題である。1stアルバムにして2枚組みという前作は宇宙飛行士についての曲が収録されたもので、引きずるような重々しさを持つポストメタルサイドのディスク1とアンビエント/ドローンの色が濃いディスク2の対比が効果的に為されているインパクトのある作品であった。今作では"moments, men, and places"について歌われており、アナログ録音によるプロダクションも相まって、時間的/空間的そして人間味のある作風となっている。このあたりが先述した幾何学だの哲学だのを感じさせる所以なのかもしれない。前作のようなドローン/アンビエントな側面は皆無に等しいが、同時に制作された"The Cleansing Undertones of Wake/Lift"は本作収録曲をベースとしたサンプリングから成り、前作のディスク2を彷彿とさせるアンビエントな音源である*2。しかも前作のそれと同様に、この"The Cleansing Undertones of Wake/Lift"は、"Wake/Lift"と同時に再生することにより何か恐ろしいものが聴こえるらしい(未確認)。まるでNeurosisとTribe of Neurotのような。
さらに特筆すべきはアートワークの美しさ。MastodonTriviumなどのメタルバンドのアートワークを多く手がけるPaul Romanoによるこれは、三面開きのデジパックにでかでかと巨大なロケットがデザインされており、その先にあるもののスケールの大きさを物語っているようでもある(根元には前作にもあった巻き貝のようなヤギの角ののようなものも)。パッケージを開き、ロケットの先端の向かう先に配置されているモノがCDであることは言うまでも無い。前作のAaron Turner (Isis)といい、文句の付けようのない人選である。
歌詞は以下の特設サイトで閲覧可能。手書きなので味はあるが、読みにくい。http://wakelift.rosettaband.com/
http://www.rosettaband.com/
http://www.myspace.com/rosetta


今年聴いた音楽の中ではMinskの"The Ritual Fires of Abandonment"、Neurosisの"Giving to the Rising"、Baronessの"The Red Album"くらい好き。実に程度のわからない表現。

*1:激情ハードコアバンドBalboaとのスプリット盤においてでさえ、その姿勢を崩さない。すげえ・・・。

*2:こちらで試聴可能。