2007年上半期私的ベストアルバム

ここ数年の時間の経過の速さは異常です。2007年ももう半分終了。
というわけで今年聴いた中で気に入った作品たちをベストアルバム20(多)ということで並べてみる。順番は適当。

Jesu - Conqueror
The End - Elementary
OLIVIA - The Cloudy Dreamer
Poison the Well - Versions
world's end girlfriend - Hurtbreak Wonderland
マキシマム ザ ホルモン - ぶっ生き返す
Maylene and the Sons of Disaster - II
片霧烈火@弘田佳孝 - キネマ・イン・ザ・ホール
Grails - Burning Off Impurities
The Fall of Troy - Manipulator (Bonus CD) (Dlx)
Pelican - City of Echoes
Sequence Pulse - Play both ends against the middle
Earth - Hibernaculum (W/Dvd)
God Is an Astronaut - Far From Refuge
Killwhitneydead - Nothing Less Nothing More
Pig Destroyer - Phantom Limb
Strung Out - Blackhawks Over Los Angeles
Neurosis - Given to the Rising
THE BACK HORN - THE BACK HORN
August Burns Red - Messengers

以下、コメントなど。
元GodfleshのJustin Broadrick率いるJesuの2ndアルバム"Conqueror"は、日本盤の紹介文にあるように、「世界で最もヘヴィなポップ・ミュージックを鳴らす」という方向性が顕著に反映された作品。日本盤のボーナスディスクに収録される2曲はいずれも至福の時を供する。
"Elementary"は、スタイルチェンジを繰り返すカナダのマスコア・バンド The Endの3rdアルバム。1st、2ndでのカオティックハードコア路線にNeurosisのような不穏なスラッジ色を塗りたくり、更に古き良き時代のエモを思わせる歌を取り入れた野心作。ピリピリとした雰囲気を保ったまま剛と柔の間を縦横無尽に行き来する様には舌を巻く。どうもまだこのバンドの到達点が見えない。
アニメNANAにレイラ役としてヴォーカルを取ったとして注目を浴びたOLIVIA。EP"The Cloudy Dreamer"では"OLIVIA inspi' REIRA(TRAPNEST)"名義での曲を含めた極上のポップソング8曲を収録。"The Lost Loli"以降の作品に特に見られる、NINやMarilyn Mansonに影響を受けたという独特なオルタナロック調は健在であり、取っ付き易い曲と透明感のある歌声を聴く限りではNANAでのプロジェクトを挟んで、よりシンガーとしてメロディメイカーとして成長を遂げている。
叙情派ハードコアの傑作である1stアルバムでインディーレーベルTrustkillの名を世に轟かしたと言われるPoison the Well。2nd、そして3rdとややベクトルを変えながらもニュースクールハードコアそのものを確実に革新/前進させていた彼ら。4年ぶりに放った今作は新たな音楽的アプローチも効果的に働き、ハードコアに留まらずロック界を揺るがす衝撃に満ちている。
world's end girlfriendの"Hurtbreak Wonderland"は10個の短篇で構成された音で聴く大人向け絵本である。彼自身のオーケストラサウンドを大々的に取り入れてファンタジー世界を描くという、オリジナリティ溢れる作風の窮みがまさしくこれ。優しく語り掛けてきたり、ナイフで目の前の料理をぐちゃぐちゃにこねくりまわしてみたり、鬼気迫る形相で訳の分からない事を口走ってみたり、夢に出てきて手足が伸びて・・・とか、そんなん。という風に聴く人を病ませるに足る音楽。
マキシマムザホルモンは日本が世界に誇ってもいいロックバンドである。"ぶっ生き返す"には、言葉がわからなくても通じる突き抜けたポップネスとパッションが詰まっている。だからと言ってメッセージが無いわけでも無いし、全てにそれがあるわけでもない。それがホルモン。だからホルモン。純粋に聴きたいポップロックアルバム。
Maylene and the Sons of Disasterは元UnderoathのヴォーカルDallas Taylorが率いるサザンロック/メタルバンド。ハードコア色が強かったデビュー盤に比べると若干聴き易く。コテコテな南部節は無いにしてもその土臭い雰囲気は踏襲しており、ハードコアを通過した者が得るダイナミズムと合わさってインパクトの強い作品に仕上がっている。曲もトリプルギターが暴れ回るものやら、豪快なシンガロングやコーラスが印象的なものまであり、粒揃いなのが良い。http://d.hatena.ne.jp/g1nn/20070415#1176620905
同人音楽を代表する実力派の歌い手・片霧烈火と数々のゲーム音楽を手がけた経緯を持つ弘田佳孝氏の合作でありコンセプト作"キネマ・イン・ザ・ホール"。声優としての活動もし、様々な声色を使う片霧烈火の歌唱力及びストーリーテリング能力は同じ系列のアーティストの中でも逸脱しており、他の追随を許さない。弘田氏が構築した混沌とした世界観に加えて、片霧氏の手による暗く醜く美しい歌詞も魅力的。どんな人生を送ったらこんな詞を書けるかと訝ってしまう。
独自のアンビエント/ポストロックを貫くインストゥルメンタルロックバンド Grailsの4thアルバム"Burning Off Impurities"。エスニックでオリエンタルな雰囲気は聴く者の精神を異国の地へトリップさせると同時に、一度はまったら抜け出せない中毒的な状態へと陥れる。#3"Silk Rd"はまるで、無言で行軍するキャラバンが脳裏に焼きつくような錯覚さえ覚える名曲である。
若き変態カオティックトリオ The Fallof Troyの3rdアルバム"Manipulator"。ハードコアを軸にした2ndアルバムに対して、今作はプログレッシブ・ロックを軸にした展開を見せる。歌を尊重した曲作りが主体であるが、持ち味であるカオティックな味付けによって独自性を確立。流行真っ只中のエモコア風味であった前作とのギャップに辟易するのは、このバンドの本質が「エクスペリメンタル」である事を失念したリスナーだけである。
これまで大自然雄大さ、美しさ、暴力性などを音楽を通して表現してきたPelicanであるが、今回の"City of Echoes"は街で暮らす人々を描いた作品だという。音の洪水で攻め倒し、言葉を用いずに一曲を通して聴き手にストーリーを沁み込ませる作風はこれまでと変わらないにしても、アルバム全体としては非常にメロディに比重がかかった作りであると感じた。
今回が初聴きだったSequence Pulse。こんな美しい音を出すバンドに出会えたことに感謝してやまない。頭の中にお花畑が広がる感じ。http://d.hatena.ne.jp/g1nn/20070509#1178704832
"Hibernaculum"は、ベテランのドゥーム/ドローンバンド Earthが提示した新たな展望の一つの形である。BGMとなりがちなドゥームミュージックを、曲という形態により近づけた前作の延長線上にあるEPで、セルフカバー曲と新曲で成り立っている。http://d.hatena.ne.jp/g1nn/20070524#1180015242
アイルランドのポストロックバンド God Is an Astoronautの"Far From Refuge"は今回リストアップした中でずば抜けて「泣ける」作品である。God is an Astronautというバンドが得意とするシンセサイザーの音と生の楽器の音の組み合わせが見事に調和しており、名が売れてきたバンドを高みにのし上げるに十分すぎる出来。アルバム序盤の流れで自我を持っていかれたら後は音に身を委ねるのみ。
SuicideGirls的なアートワークが目を引く凶悪グラインドコア/メタルコアの若大将killwhitneydeadの新作"Nothing Less Nothing More"。この作品と同時期にはライブなどでしか手に入らない"Hell to Pay"もリリースされた。映画のセリフのサンプリングを多用するハードコアで、ヴォーカルはZaoのそれに通じる悪さがある。Bloodjinnのヴォーカルなどもゲスト参加しており、クリーンパートが新鮮である。アメリカのアングラシーンで猛烈な人気を誇るバンドなので日本に飛び火する日も近いはず。
名作"Terrifyer"から3年、Pig Destroyerの新譜は目新しさに欠けるものの、求めるものがそこにあるからリスナーは聴き続けるのである。ひたすら速く重く激しく、汚く下品で美しく。つまりカッコイイ、この一言に尽きる。
Fat Wreck Chordを代表するメロディックハードコアバンド Strung Outもまた3年ぶりの新作。前作の路線の延長線上である。パンク小僧の万人がカッコイイと言うだろう(たぶん)。パンクがハードコアに寄り過ぎずにメタリックなアプローチをするというスタイルを確立したバンドだと言っても過言では無い。
Neurosisの新譜は、Times of Grace以降の作品においてバンドが推し進めた方向に"Sun That Never Sets"で新たな要素として加えられた「歌」がバランスを崩す事無く微妙な塩梅で融合されている。非常に味わい深い作品である。


うはあ、長い。後半ダレてきたのが文章に現れてる。
後で書き足す。